中尾 寛  Steps

建築家、中尾寛は、少し変わっている。 所謂、建築物は造らないし、設計図も引かない。
自身の考える「建築」の概念、原型、を風景の中に設置して写真を撮り映像作品として展示することが多かった。
これまではそうだった。
しかし、今回はこれまでよりさらに、「作品」と呼ぶに相応しい展開となった。
昨年オーストラリアの大学の客員教授として招聘され、数か月滞在して学生とともに、現地の公園に煉瓦の階段を造ってきたことから、その階段を今度は、古本を素材にいして「本」の中に作ったのである。
例えば、三木清段段、白秋段段、鴎外段段、直哉段段 等々。
本の選択も外見と内容の双方から考えており、装幀や厚みにも配慮がなされていて、それ自体興味深い。
古本といえどもまだ十分に美しいものが多く、それをナイフで手切りして階段を作っていく。 百科事典や辞書など厚いものだと階段の表情も変わってくる。 美術家で本の作品を創っている作家も多いが、建築家では、珍しいだろう。 画期的な仕事だと思う。 今後、発展させられれば、とも。

T/A

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